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AIに「19人の専門家」を演じさせて品質管理する方法

はじめに — ある開発現場での気づき

先日、あるシステム開発プロジェクトで設計書のレビューをしていたときのことです。レビュー担当者が一人で100ページ超の設計書を見ているのですが、正直なところ、途中から目が滑っているのが分かりました。無理もありません。人間が一人で、機能仕様・データ設計・セキュリティ・品質基準を同時にチェックするのは、そもそも無茶な話なのです。

そこで私が試したのが、「マルチペルソナ方式」という少し変わったAI活用法です。要は、AIに「機能定義の専門家」「セキュリティの専門家」「品質管理の専門家」など、複数の役割を順番に演じさせて、それぞれの視点でチェックさせるというもの。

最初は「そんなうまくいくのか?」と半信半疑でしたが、やってみたら想像以上の結果でした。この記事では、実際にどうやったか、そして中小企業の日常業務にどう応用できるかをお話しします。

マルチペルソナ方式とは

マルチペルソナ方式とは、AIに複数の専門家の役割を順番に演じさせ、それぞれの専門的な視点からレビューやチェックを行わせる手法です。一人のAIが「なんでも屋」として漠然とチェックするのではなく、明確な役割と評価基準を持った専門家として振る舞わせることで、チェックの精度と網羅性が格段に向上します。

例えば、あるシステム開発プロジェクトでは、以下の4つの専門家ペルソナを設定しました。

それぞれの専門家には、具体的なチェック項目と評価基準を与えます。AIはその役割に「なりきって」レビューを行い、OK/NG/確認不可の3段階で判定し、NGの場合は改善提案まで出力します。

重要なのは、各ペルソナに明確な評価基準と出力フォーマットを指定することです。「なんとなくチェックして」ではなく、「以下の10項目について、それぞれOK/NG/確認不可で判定し、NGの場合は理由と改善案を記載せよ」と具体的に指示することで、再現性のある品質チェックが可能になります。

実際にやってみた結果 — 予想外の発見

先日、実際にこの方式で設計書をチェックしてみました。10種類の専門家ペルソナに、合計110のチェック項目を割り振って実行した結果がこちらです。

チェック項目数:110項目
OK:62件
NG:31件(31.6%)
確認不可:5件

正直、NG率31.6%という数字にはちょっと衝撃を受けました。人間のレビューでは「概ね良好」と判断されていた設計書から、これだけの改善点が出てきたわけです。

でも、もっと驚いたのはその先でした。NG 31件を並べてみると、42%にあたる13件が実は同じ根本原因だったのです。あるクラスの設計が未完成で、それがデータ設計、品質管理、セキュリティと、別々のペルソナから繰り返し指摘されていた。

一人のレビュアーなら「ここ、エラー処理がないな」と1件として数えて終わりです。でも10人の専門家が別々の角度から見たことで、「これは個別の問題じゃなくて、構造的な設計漏れだ」ということが浮き彫りになった。根本原因を1つ直すだけで、13件のNGが一括で消える。これは人間だけのレビューではなかなか得られない気づきでした。

中小企業での応用例

マルチペルソナ方式は、システム開発に限った話ではありません。中小企業の日常業務でも、すぐに応用できる場面がたくさんあります。以下に3つの具体例をご紹介します。

1. 営業提案書のチェック

営業担当者が作成した提案書を、以下の3つのペルソナでチェックします。

営業担当者は「売りたい」気持ちが先行するため、価格の根拠が弱かったり、リスクの記載が不十分だったりすることがあります。3つの視点で自動チェックすることで、提出前に品質を底上げできます。

2. 求人原稿のチェック

採用担当者が作成した求人原稿を、以下の3つのペルソナでチェックします。

求人原稿は法的なリスクが高い文書の一つです。うっかり年齢制限を匂わせる表現を使ってしまったり、性別を限定するような記載をしてしまうケースは少なくありません。AIに3つの視点で事前チェックさせることで、法的リスクを大幅に軽減できます。

3. 社内マニュアルのチェック

作成した業務マニュアルを、以下の3つのペルソナでチェックします。

ベテラン社員が作成したマニュアルは、暗黙知が多く含まれがちです。「新入社員の視点」というペルソナを入れることで、「この手順、前提知識がないと分からない」「この用語、説明がない」といった指摘が自動で上がってきます。

すぐに試せるプロンプト例

以下に、マルチペルソナ方式を試すためのプロンプトテンプレートを示します。お手元のAIツール(ChatGPT、Gemini、Claudeなど)にそのまま貼り付けて使えます。

# マルチペルソナ品質チェック

## あなたの役割
以下の3人の専門家を順番に演じて、
提示された文書をレビューしてください。

## ペルソナ1: [専門家の役割名]
- 視点: [何を重視してチェックするか]
- チェック項目:
  1. [具体的なチェック項目1]
  2. [具体的なチェック項目2]
  3. [具体的なチェック項目3]

## ペルソナ2: [専門家の役割名]
- 視点: [何を重視してチェックするか]
- チェック項目:
  1. [具体的なチェック項目1]
  2. [具体的なチェック項目2]
  3. [具体的なチェック項目3]

## ペルソナ3: [専門家の役割名]
- 視点: [何を重視してチェックするか]
- チェック項目:
  1. [具体的なチェック項目1]
  2. [具体的なチェック項目2]
  3. [具体的なチェック項目3]

## 出力フォーマット
各ペルソナごとに、以下の形式で出力してください。

| # | チェック項目 | 判定 | 理由・改善案 |
|---|------------|------|------------|
| 1 | ...        | OK/NG | ...       |

## 最後に
全ペルソナのNG項目を集約し、
根本原因が共通するものをグループ化してください。

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## チェック対象の文書
(ここに文書を貼り付けてください)

まずは自分の業務に合わせて、3つのペルソナとチェック項目をカスタマイズしてみてください。ペルソナの設定が具体的であればあるほど、AIの出力も的確になります。

まとめ — まずは3人の専門家から

タイトルには「19人の専門家」と書きましたが、いきなり19人も設定する必要はありません。私も最初は3〜4人から始めました。

コツは、AIに「なんとなくチェックして」と投げないこと。「あなたは○○の専門家です。以下の項目についてOK/NGで判定してください」と明確に役割と基準を与えること。これだけで、AIの出力の質がまるで違ってきます。

明日の朝、まずは自分が最近書いた提案書やメールを題材に、「顧客目線」「上司目線」「法務目線」の3人でチェックしてみてください。5分で終わりますし、きっと「あ、これ気づかなかった」という発見があるはずです。

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