はじめに ── 「写真はあるんですけど、ブログが書けないんです」
ある企業の社長から、こんな相談を受けました。
「うちのスタッフは現場仕事が中心で、PCの前に座る時間がほとんどない。でも、会社のブログは更新したい。写真は撮ってるんです。でも、それを文章にする時間も、正直に言うとスキルも足りなくて……」
この悩み、実は多くの中小企業に共通しています。
建設、清掃、メンテナンス、介護、農業──現場で価値を生む仕事をしている社員ほど、デスクワークに割ける時間がありません。しかし、ブログやSNSでの情報発信は、新規顧客の獲得に直結します。特にGoogleで「地域名+サービス名」で検索して業者を探す時代、ブログを書いている会社と書いていない会社では、見つけてもらえる確率が大きく違うのです。
そこで私は、スマホで撮った写真をアップロードするだけで、SEO対応のブログ記事をAIが自動生成するツールを開発しました。
「Before/Afterが撮れない」という想定外の壁
最初に作ったのは、施工前と施工後の写真2枚からブログ記事を生成するツールでした。
仕組みはシンプルです。Googleが提供するAI「Gemini」の画像認識機能を使い、2枚の写真の違いを読み取らせます。そこに、業種に合わせたプロンプト(AIへの指示文)を組み合わせることで、「読者の悩みに共感し、プロの仕事ぶりをアピールし、問い合わせにつなげる」構成の記事が自動で出来上がります。
これは好評でした。社員の方々が空き時間にスマホで使い始め、ブログの更新頻度が目に見えて上がりました。
しかし、しばらくして想定外の声が届きました。
「写真はあるんですが、Before/Afterにならないんです」
現場によっては、被害が目に見えにくいことがあります。例えば、液体の漏洩事故。漏れた液体は床下や土壌に浸透してしまい、見た目にはほとんど変化がありません。臭いや測定器の数値でしか被害を確認できない。そうなると、Before/Afterの写真を撮っても「同じに見える」のです。
一方で、作業中の写真──機材を設置している様子、測定器で数値を確認している場面、養生を施している風景──は豊富にあるとのことでした。報告書用に必ず撮影しているからです。
「作業写真モード」の開発 ── 写真の意味をAIに教える
この課題を解決するために、「作業写真モード」を新たに開発しました。
Before/After2枚の比較ではなく、作業中の写真を最大4枚アップロードできるモードです。AIには「これはBefore/Afterではなく、作業プロセスの写真です」と明示し、写真に写っている機材や作業の様子からプロの仕事ぶりを読み取るよう指示します。
ポイントは、AIに「なぜこの作業が必要なのか」を教えることでした。
例えば、測定器を構えている写真だけでは、一般の読者には何をしているのか分かりません。しかしAIに「目に見えない汚染は測定器でしか確認できない。この測定こそがプロの仕事の証」と指示しておけば、写真1枚から「なぜ専門家に頼むべきなのか」を読者に伝える記事が生成できます。
現場区分を選択式にしたのも工夫のひとつです。現場の種類によって、読者の悩みも、使うべきキーワードも、アピールすべきポイントも異なります。選択肢を選ぶだけで、AIへの指示が最適化される仕組みにしました。
SEOは「設定済み」── 社員が意識しなくていい仕組み
もうひとつ重視したのが、社員がSEOを意識しなくても、SEO対応の記事が出来上がることです。
ツールの裏側では、以下の処理が自動で行われています。
1. 地域名の自動挿入
入力された地域名(例:「札幌市清田区」)がタイトルと本文に自然に織り込まれます。「地域名+サービス名」で検索する見込み客に見つけてもらうためです。
2. 業種特化キーワードの埋め込み
業種ごとに、検索されやすいキーワードをあらかじめ設定しています。社員は写真をアップロードするだけ。キーワード選定という、本来なら専門知識が必要な作業を省略できます。
3. FAQ・ハッシュタグの自動生成
記事末尾に「よくある質問」とハッシュタグが自動で付きます。FAQはGoogle検索の「他の人はこちらも質問」に表示されやすく、SEO効果が高い要素です。
4. 記事構成の統一
「冒頭のまとめ → 読者の悩みに共感 → 作業工程の説明 → 費用の話 → 問い合わせ誘導」という、読者を行動に導く構成が毎回自動で適用されます。
Before/Afterと作業写真の統合 ── 1つのツールで使い分ける
Before/After版と作業写真版、2つのツールを別々に運用していましたが、「どっちを使えばいいか迷う」という声を受けて、1つの画面にタブ切替で統合しました。
タブを切り替えると、画面のテーマカラーが変わります。Before/Afterモードではオレンジ色、作業写真モードでは青色。今どちらのモードを使っているかが一目で分かるようにしました。小さな工夫ですが、PCに不慣れな方にとって「今何をしているのか」が視覚的に明確であることは重要です。
共通の設定項目(地域名、作業人数、追加キーワードなど)は1箇所にまとめ、操作の重複を排除しました。
追加キーワード ── 現場を知る社員の「ひとこと」が記事を変える
開発を進める中で気づいた重要なことがあります。現場の社員だけが知っている情報こそ、最も価値があるということです。
例えば、「この現場は保険が全額認定された」「隣の家まで調査した」「土を1.5トン入れ替えた」。こうした具体的な情報は、AIだけでは生成できません。しかし、記事に盛り込めば、読者の信頼感は格段に上がります。
そこで、「追加キーワード」という1行入力欄を設けました。社員が「保険全額認定」とだけ入力すれば、AIがその事実を記事全体に自然に織り込みます。長い文章を書く必要はありません。現場のプロが持つ知見を、最小の入力で最大限に活かす仕組みです。
まとめ ── AIは「書く」を代行し、人は「知っている」を提供する
このプロジェクトで実感したのは、AIと人間の役割分担です。
AIは文章を書くのが得意です。SEOのルールに沿った構成、適切なキーワードの配置、読者心理に合わせたトーン。これらはAIに任せられます。
一方、現場の空気感、作業の難しさ、お客様の声──これは現場にいる人間にしか分かりません。
このツールが実現したのは、「PCが苦手な現場の社員」と「文章が得意なAI」のチームプレーです。社員はスマホで写真を撮り、キーワードをひとこと添える。AIがそれを読み取り、プロの仕事を伝える記事に仕上げる。
もし「ブログを更新したいけど、社員に書かせるのは難しい」とお感じでしたら、こうしたAIツールの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。業種や現場の特性に合わせたカスタマイズも可能です。お気軽にご相談ください。
吉田中小企業診断士事務所